採用力の低い零細3次請Slerでも、求人広告で採用成功できる方法
2016年4月の有効求人倍率は1.34倍まで上昇しました。
採用ニーズの高い専門分野、とくにITエンジニアの採用競争はし烈で、30歳前後の経験者1人に10社以上のオファーが集まることも不思議ではないマーケットです。
そんな中、採用力の低い中小IT企業はどこも苦戦しており、求人広告を出しても応募すらなし、人材紹介に依頼しても反応すらないといった状態。
そんな中、ある工夫をしたIT企業が採用成功を実現しました。今日はその具体例を紹介します。
目次
- 採用成功した企業は、圧倒的に採用力のない零細3次請Sler
- なんとか差別化できるポイントはないものか
- 「もう遠距離恋愛はつらい」それがボクの転職理由
- 結果、見事24歳の若手が採用決定!しかも群馬から大阪へIターン転職
- 結論、「転職初心者は、プロの僕らが思うほどマーケットを知らない」
採用成功した企業は、圧倒的に採用力のない零細3次請Sler
機密情報のため具体的な情報は避けますが、設立からまだ5年ほどしかたっていない、社員10数名の小さな会社でした。
業態も3次請けがメインで、エンジニア社員は全員客先に常駐。よって必然的に給与は低い、休みは少ない、残業も慢性的……
大変失礼ながら、この会社には目立った魅力がなかったのです。
なんとか差別化できるポイントはないものか
魅力の少ない中小企業でエッジのある求人広告を作成するときによくあるのが、「社長押し」のもの。
現状がまだまだ未完成であるため、社長の人柄や壮大な目標などで魅力的に見せるというものです。
そこで社長にインタビューを依頼し話を聞いたものの、お人柄は最高でしたが、特に強烈なカリスマ性が感じられることはなく……。
ただ、唯一目立ったのが「多様性を受け入れる土壌がある」ということでした。
例えば過去に漫画家や小説家を目指して挫折した若手を未経験で採用したり、転職理由を面接で聞くと、「もう遠距離恋愛は嫌なんです」とか言っちゃう素直な若手を採用したり。
さまざまな人生背景を持つ社員を採用し、つかず離れずの絶妙な距離で非常に働きやすい環境を作り上げていたのです。
「訴求するならここしかない」と思い原稿を作成していきました。
「もう遠距離恋愛はつらい」それがボクの転職理由
上記の見出しが実際の募集で使ったキャッチコピーです。
過去中途入社した、彼女を追いかけて大阪へ転職した方にインタビューをすることができたのもこのコピーができたきっかけとなりました。(今はもう別れてしまったようです…残念…)
「上流工程やれますよ!」
「給与UP、さらには残業時間も減らせますよ!」
という訴求が当たり前になっているIT求人の中、異質とも言える打ち出しです。
あえて他社と比較するような原稿ではなく、
「転職するのに肩肘はらなくていいですよ」
「ありのままの転職理由を受け止めますよ」
「あなたの居場所はここにありますよ」
というような転職初心者に寄り添ったモノにしたのです。この会社には、たいそうな転職理由や面接でのエセ自己表現は必要ありませんからね。
結果、見事24歳の若手が採用決定!しかも群馬から大阪へIターン転職
彼の転職理由は、「昔大阪に来たことがあり、一度住んでみたかった」というもの。
はじめての転職で、かつそんな動機で面接に臨めるのか不安だったそうです。
そこで求人広告を見たときに、自分よりラフな転職理由で転職した人がインタビューされているものを発見。
「ここなら」と思い応募され、トントン拍子に採用となりました。
結論、「転職初心者は、プロの僕らが思うほどマーケットを知らない」
この決定した24歳の方は、他の企業でも喉から手が出るほどの人材で、正直決定の知らせを受けたときは「なぜこんな人材がこの会社へ?」と思ってしまうほどの方でした。
しかし、入社後にお話をお伺いしてみると、こちらが思っているほど他社比較をせずに応募をしたと言います。さらには会社選びで大事なポイントは、「いかに自分にフィットするか」だとも。
これは正直目からウロコでした。
若手(転職初心者)は、プロの僕らが思うほど応募先比較をしないという事実。
確かに、僕らは毎日採用市場に触れているためマーケット感覚を強く持っています。
しかし、転職初心者はそうではありません。はじめての転職であれば、自分の経験やスキルがどれだけの評価をもらえるのかはわからなくて当然ですよね。
だからこそ彼らは「相対評価」ではなく、自分にいかにフィットするかという「絶対評価」で転職先をセレクトするのでしょう。
しかしプロである僕らは「差別化しなきゃ」と躍起になって、肝心のインサイトを逃すことがあるのだと、この事例を通じて学びました。